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成形図説
二十二/菜
山津芋山芋は根は更にも雲ず、食にも薬にも皆悉味の美のみならず、性も良こと野蔌中の巨魁ともいふなるべし、本山原に産るものにして、亦家園にも生(はえ)り、三四月の交、宿根より苗お出し蔓と成る、葉に縦道(たてすぢ)の光沢ありて軟けし、老(ふる)くなれば三尖(みかど)なすあり、其根大きは蔓亦従て太し、中夏の頃葉間に細花さく、棘の花に頗似れり、色白きと淡紅とあり、実なりて中秋に至りて熟(みいれ)り、円扁大小乙(ひとし)からず、色梨子に似て、是亦味佳しく、生も熟(うで)たるも食ふべし、即糠子なり、〈◯中略〉根は四時よろしけれど、其発芽の節は味腆からず、二八月掘采ぞよき、大なるは囲み二握に近く、長さ四尺にも余れり、〈◯中略〉凡大和、山城、丹波、近江、紀伊等に産る山芋嘉し、中国西州より東陸山形日光富士郡内練間の諸地また宜し、