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空穂物語
藤原の君
かくて人まいりなどするお、とくまちいちへ出たるまに、さむらひに人まいりて、ひるましり侍に、さるなヽしとて、うへに申ければ、おとヾ心まどひて、われか人かにもあらでの給、かヽればこそは、人なくて年ごろへつれ、いかなるついえ有らん、ましてあたらしくとも人は、十五人つけ、まめおひとさやあてにいだすとも、とおまりいつヽなり、たねなくしていくそばくなりぬる、こおひとつあてにいだすとも、とおまりいつヽなりならしてとらば、おほくのぬかごいも出きぬべし、