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重修本草綱目啓蒙
十六/水草
菖蒲(○○) せきせう(○○○○) ねがらみ〈大和本草〉 一名緑剣真人〈輟耕録〉 石澗菖蒲〈遵生八揃〉 石上草〈山堂四考〉 剣背草〈楊州府志〉 尭薤〈典籍便覧〉 望見消〈外科啓玄〉 木臘 陽春雪〈共に同上〉 紫茸〈名物法言〉 松衣個〈採取月令〉 跛者〈金光明経、梵名、〉 石菖〈白昌条下〉 菖莆〈正字通〉 筌〈典籍便覧〉 昌羊〈通雅〉渓澗水傍に生ず、或は石に附て生ず、平地に移し栽て繁茂し易し、石に附たる者お採、土お洗ひ去り、水お用てこれお養ふも亦茂す、葉皆深緑色にして剣脊あり、冬も枯れず、是お切れば香気あり、春茎お抽て頂に穂おなす、長さ一二寸、形筆頭菜(つくつくし)に似て狭く堅し、篳〓に似たり、淡黄色、俗にめはじきと呼ぶ、根は緑色節多し、大さ三分許、節多お良とす、故に一寸九節と雲ふ、然ども必しも九の数に拘はらず、本草原始にも、多節者良、不必泥于九節、但忌鉄と雲ふ、石菖の品類甚多し、大葉なる者あり、小葉なる者あり、直葉なる者あり、両面なる者あり、白色なる者あり、間道なる者あり、小葉なる者は高麗ぜきせう(○○○○○○)と呼ぶ、即銭蒲なり、本草彙言に、甚有短一二分者と雲ふは、びろうどぜきせう(○○○○○○○○)なり、葉長さ二三分にしてよく石に附く、是即浦城県志に謂ゆる雀舌なり、又尋常のせきせうも、度々葉お剪る時は細短になる、時珍も亦これお雲り、然れども高麗ぜきせう、びろうどぜきせう等は、剪洗に因るに非ず、自然に小なる者なり、花戸には鬼ぜきせう(○○○○○)、鎌倉ぜきせう(○○○○○○)、あづませきせう(○○○○○○○)、唐せきせう(○○○○○)、琉球せきせう(○○○○○○)、其余数品あり、せきせうお養ふ法は、秘伝花鏡に詳かなり、増、種樹家にて名称猶多し、大なる者にだてくらべ、竜門、中なる者に有栖川、正宗、ちうや、しまぜきせう、両根、たにみづ、黄八丈、光竜、みだれがみ、あさぎ、またぜきせう、小なる者に竜のひげ、かまくら、かうらいせきせう等あり、其他品類多し、〈◯中略〉白昌(○○) あやめぐさ〈古歌〉 うたかたぐさ のきあやめ 白実草〈共に同上〉 せうぶ 一名泥蒲〈群芳譜〉古歌にあやめと読は、皆今端午に檐に挿むせうぶなり、今俗にあやめと呼て、花お賞玩する者ははなあやめの略なり、せうぶは水中に生ず、燕子花(かきつばた)の葉に似て狭長、淡緑色、薄して一縦道あり、葉の長さ四五尺叢生す、夏穂お出す、せきせうの穂に似て大なり、根も亦粗大にして香気あり、薬に入れず、一種間道の者あり、又一種はなせうぶは葉の形同くして、花は燕子花の如し、数百品あり、漢名詳ならず、釈名、渓蓀(○○)、 蘭蓀(○○) この二名ははなあやめにして即水昌蒲なり、今略してあやめと雲ふ、山渓に自生す、陸地に移して繁茂し易し、人家に多く栽ゆ、葉白昌に類せず、燕子花葉に似て狭し、長さ一二尺多く叢生す、四月花お開く、円茎高さ一尺許、梢に二三花開謝相続ぐ、形はなせうぶに似て小く、弁狭く紫碧色、大小数十種あり、又白花なる者あり、秘伝花鏡に白花蓀紫花蓀の名あり、