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百姓伝記
十三
菖蒲お植る事一菖蒲お植るに土地に嫌ひなし、雨池堀岸河岸土崩れ損ぜる処々に、根のはること限りなし又水なき処へも生上るぞ、雨池などの小さき池には忌べし、生茂り水お減すものなり、〈◯中略〉石菖お植る事一石菖の種色々あり、土民の用るは大石菖お植べし、山間などの雨池石地などにて崩るヽ処の水付、又沢水池水の余りて地お破る処に植て、地おしめさせ、石おとぢ合よ、四季ともに水の付く処には、古根お裂き植よ、井のもとなどの土うくやき流れ、小石出る処に植てとぢ合よ、赤葉さいさい取て捨て、葉お刈りたるがよし肥えては益なく、瘠ては根茂くなりてよし、