増補地錦抄
六
杜若(かきつばた)のるひ鷲尾(わしのお) 花るりこん色、花中に白き筋あり、しべのごとく成ほこ三まひづヽ上へ立〈つ〉物なり、是もるりこん色々、 羅生門(らせうもん) 花うすくろし 村雲(むらくも) 白花にるり色のほし、さらさのごとくあり、 橋姫(はしひめ) むらくものごとくにて、るりのさらさ成ほど見事、大りん也、 濡鷺(ぬれさぎ) 花水あさぎいろ 薄雲(うすぐも) 白花に村々とかすり有 四季咲(しきざき) るり色、四度花咲、 ごまほし 白にうす紫のほし有 白 白に二種あり、つねのしろは花中に紫のさしうつろひ有、ぬけ白といふはうつろひもなし上々、 六葉(ろくやう) むらさき色よし、葩六まいづヽ出る、 八葉 むらさき、是も八葩(は)出る、 八橋(やつはし) こいむらさき、花首に葉一まひづヽ出る、是迄かきつばたのるひ也、何も茎一本に花三度づヽ咲物なり、肥たるは四つ五つも咲、一ばん花二番花といふ、