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剪花翁伝
二/三月開花
燕子花(かきつばた) 此花多種也、其四五種左の如し、いづれも開花三月中旬也、橋姫、花中心青く縁白隈になる、村雲、花名の如し、吹墨、白地に青き吹点あり、濃紅、紅梅色に淡青お含めり淡紅、淡赤に淡青お帯たり、白、極白あり、並白あり、藍、大輪濃色あり、並花あり、大葩なるものあり、俗に是お六葉(ろくえふ)といへり、此花に青色はなし、いづれも変色花なり、方陽面、地水辺の湿地よし、常に水の滞らぬやうにすべし、肥淡小便、春芽出し前に澆ぐべし、下種春彼岸にすべし、されど成長遅し、分株春秋両彼岸ともよし、分株の方は分べき株お、地中にて欠とるべし、残る親株動痛ずして栄はやし、〈◯中略〉四季咲燕子花(しきざきかきつばた) 花の色青し、開花八十八夜頃より四月中旬迄咲也、又夏の土用より咲出して、漸漸に年中花あり、方地分株等春の花と同じ、