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塩尻

薑お撤せざるは、往昔食饌に有し物故に、これお食せずして盤盂に残置、たうべざる事なりと、浅見氏いへり、誠に文義明らかにして、おもしろしといひ侍りしに、岩付氏がいふ、此事古書に証なくば、今説用ひがたしと、予〈◯天野信景〉曰、四書備考孔安国雲、斎禁葷物、薑辛而不臭、故不去、夫雖斎亦不去、則常食之有薑可知雲々、浅見氏が博識考所有てしかいへるなるべしといひし、南史の裴子野が伝に、孔称不撤といひ、百川学海にのする荊公の問に、劉貢が答ふる所皆謬れり、本草に孔子民おすヽめて、はじかみお食せしむるといへる、可笑の事也、