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重修本草綱目啓蒙
九/芳草
薑黄 一名赤天佩〈輟耕録〉 野薑〈薬性奇方〉是唐山及び琉球より別に渡に非ず、本邦薬舗にて鬱金莪荗の中より根に枝ありて、生薑の形の如く節ありて、重きものお撰び出し、これお薑黄と名け売る、削れば内黄色なれども鬱金より浅くして生薑の気あり、即是真物にして琉球の産なり、今薬舗にて普通に薑黄と名け売るものは、かしらうこんにして、鬱金の老根なり、鬱金と名け売るものは、ぢくうこんにして、鬱金の嫩根なり、然れども老嫩共に鬱金なり、又かしらうこんお細末となし、薑黄と名け売るものもあり、漢種の薑黄の苗今は少し、和産もなし、唐山にても薑黄と鬱金と混じ売ることあり、唐山には鬱金少くして薑黄多し、故に薑黄の老根お薑黄とし、嫩根お鬱金と為て売る、故に通雅に本根即薑黄、傍附即鬱金と雲へり、薑黄鬱金蓬莪荗の三物、諸説紛々たり、而して集解蔵器色味お以て三物お分別するの説、最も詳なり、今これに従ふ、然れども三年以上の老薑お以て、薑黄とするは誤甚し、又薩州に山うこんと称する草あり、根色浅くして物お染るに堪へずと雲ふ、これ薑黄に能似たり、然れども未だ親しくこれお見ず、