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重修本草綱目啓蒙
九/芳草
蓬莪荗 一名蓬莪朮〈本草〓言〉 蓬荗〈本経逢原〉 蓬莪〈三才図絵〉 蓬朮〈本草原始〉 広荗〈本草述〉 破関符〈輟耕録〉 青薑〈続医説〉 莪荗〈附方〉 蓬萊朮〈羅浮山会編〉略して莪朮と雲ふ、通名なり、享保年中に唐種お渡し官園にあり、又明和年中琉球種薩州より来り、京師浪華に競ひ栽れども、皆冬お経ずして枯る、今尾州江州には栽伝ゆるものあり、苗の状鬱金に異ならず、隻葉の中心に紫黒色の斑一条あり、六月に花お生ず、大抵鬱金の如にして小し、細長なる葉多く重りて、欵冬花の如し、面白色背は緑色、梢葉は深紅色、其脚葉間ごとに朱花一つあり、形黄芩花に似て内黄色なり、又一種葉に紫斑なきものあり、根の形色舶来に同じ、舶来に二品あり、上品お御物〈官府に入お雲〉と雲、芋卵(こいも)の形にして外黄白色、内は浅青黒色なり、下品お商売と雲、形小く内外ともに色黒く朽蝕多し、薬用に堪へず、又先年丹後但馬より和の莪朮と称して、市に出せし者は、根の形細く内外白色にして味苦し、是えんれいさうの根にして、王孫の一種なり、莪朮の類に非ず、