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増補地錦抄

美人蕉 花極てくれないなる事、ともし火のごとく、又はざくろの花の色に似り、されば唐にては紅蕉といふ、葉はばせうのやせたるごとくちいさし、花のうつくしきとて、びぢんせうといふといへどもしからず、此葉おせんじ、女中髪おあらふに、けお長くしてくろからしむ、又は油おとりて、びん水にして、髪おくしけづりて、けのおつるおとヾめ、かみすぢおふとくし、つやお出し、葉おくろやきにしてかみの油にねり、髪のはげたる所にぬりて、けおせうず、其しるしばせうにすぐれたるとて名付よし、誠に女は髪のめでたからんこそ、人のめたつべかめりといへば、美人蕉とよぶもにくからず、