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増補地錦抄

蘭のるひ大蘭(おふらん) 花うす黄色のやうに見ゆる、さかりの時は、ふん〳〵たる香ありて、家内くんずる也、蘭は葉長く大かぶなるおよしとす、大蘭は葉ながし、小蘭 花は大らんのごとく、葉みじかく、葉先みだれてあしヽ、ひめらん共いふ、白茎(しろくき) 葉も花も茎白し、是お上とす、今は中絶してすくなし、黒茎、紫茎、青茎とていろ〳〵有、大蘭は青茎なり、又は菖蒲蘭といふ有、大蘭と同じ、〈◯中略〉石蘭(せきらん) 葉はしらんはくらんなどのごとくにて、根本土の上に二三寸高く岩のごとく成かぶ有、年々に数出て後は岩窟のごとし、其間々に花七八寸に出る、花形は大蘭に似て色うこん也、岩石蘭(がんせきらん)共雲、風蘭(ふうらん) 葉はみじかくせきせうのごとし、花白し、根お竹の皮につヽみ、中につりて置、風お得て栄る也、春蘭(しゆんらん)〈春草の部にくはし〉 沢蘭〈花うすむらさき〉ばらん 葉は大きくあつし、花は未見、本草綱目馬蘭(ばらん)、時珍曰、其葉似蘭大きし、其花似菊紫也、故名俗称物之大者為馬雲々、此事にや不知、日光蘭(につくわうらん) 葉はしらんによくにて、花は九りん草のごとくなれ共、咲ぶり各別なり、ほそきえだおうちてさく、色はこいむらさきと白とうす色かきいろ四五色有、紫蘭(しらん) 葉はさヽのやうにて、中より花出て、こいむらさき、白蘭(はくらん) 葉はしらんよりみじかく、花しろし、黄蘭(きらん) 葉はあつもり草といふ草のごとし、花黄色、