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百品考

歳蘭 一名拝節蘭 和名ほうさいらん灌園草木識、歳蘭葉長四尺余、花一茎廿余蘂、赤黒色、無香不韻、拝歳時方開、亦蘭類也、植以備品、〈◯中略〉天保の初琉球より渡る、花戸誤呼て豊歳蘭と雲、形状はくらんに似て長大なり、葉の幅一寸余、長さ二三尺、深緑色にして至厚く甚光沢あり、能直立す、春花お開く、紅紫色、萼大にして弁細し、茎の高さ二尺に及ぶ、山柰甘松お併たる如き匂あり、幽蘭の清香馥郁たるに異なり、故に無香と雲、紫蘭 和名きんりやう ちやうじゆらん薬甫同春、紫蘭三月開、色鮮可愛、但恨無香、 女南甫史、紫蘭葉狭如水仙、比蘭蕙短而柔、三月中開紫花、有色無香、春初苗長可分、文政の比舶来するところなり、俗に金稜辺と雲は誤なり、葉は鳳蘭に似て深緑色光あり、婀那として斜に垂れて直上せず、一科より七八葉排生す、花は冬より苞お発し、三月比花お開く、茎の長さ一尺余、二十余萼に及ぶ、紅紫にして弁の辺色うすし、香気絶てなし、生育しやすし、玉魫蘭 一名魚魫蘭、一名玉幹、一名玉軫蘭、金〓蘭譜、魚魫蘭花片澄徹、宛如魚魫、采而沈之水中、無影可〓指、葉頗勁緑、此白蘭之奇品也、〈◯中略〉紫蘭と同時に唐山より渡る、葉の長さ尺余、幅広して少し垂て直上せず、深緑色にして光あり、〓蘭(めらん)の如し、発芽の時色白し秋花あり、幹細く青白色、花建蘭(しらん)と同形にして潔白にして、香気最高し、蘭中の上品なり、玉整花 一名素心蘭 和名そしんらん雲間番稚峯百花詩、素心蘭詩、人生至友杳難尋、蘭草因移澗谷陰、長与隠淪成契合、清風披払素居心、花鏡、玉整花葉修長而痩、色甚瑩白可愛、白花之最能生者、此亦前年唐山より舶来す、葉玉魫より幅狭して細長なり、又草蘭(かんらん)の葉にも稍似れり、秋花お開く潔白にして玉魫に同じ、幹苞ともに青白色玉魫に似れり、秋花お開く、潔白にして玉魫に同じ、幹苞ともに青白色、玉魫に似れり、清香馥郁として最諸蘭に優れり、蘭中の魁と称すべし、素心蘭の名は香雪野村氏の考るところなり、碧玉幹 一名青蘭 和名あおしべ せいせいらん花鏡、碧玉幹花雖白、微帯黄、有十五萼、合并幹而生、竟有二十五萼、其葉細最肥厚而深緑、〈◯中略〉葉建蘭(じらん)に似て勁して直立す、深緑色愛すべし、春発芽の時紫色最深し、秋花お開く、建蘭に似れり、花に三品あり、花萼青白にして、幹苞共青白なる者お、しやむの青青と雲、上品なり、花萼青白にして幹青色、苞微紫なる者お青青と雲、中品とす、花萼青白にして、幹苞共に紫色お帯る者お、あおしべと雲、下品とす、三種共に花は青白色にして、香気清遠なり、貴ぶべし、金稜辺 一名金線辺、一名金辺蘭、 和名やきばらん こんりんざい花鏡、金稜辺花豊腴而嬌媚、毎幹十二萼、色同呉蘭、妙在葉、自尖上生一黄線、直下如金糸喜肥、〈◯中略〉建蘭(じらん)の一種なり、葉質建蘭に同して、葉端の尖より四五寸のあいだ、両辺に黄白色の縁あり、花は六七月の間に開く、高さ尺許、幹紫色にして花黄緑色、舌の如き弁に紫色の細点あり、香気よし、金稜辺の名は紫泉平井氏の考なり、銀線辺 一名玉辺蘭 和名ここんりん ここんりんざい薬甫同春、銀線辺有白有香、 興化府志、蘭有葉辺一線如金一線如〓玉、謂之金辺玉辺蘭、銀線辺に両種あり、葉質建蘭(じらん)にして銀辺なる者お、古金輪と雲、葉質〓蘭(めらん)にして銀辺なる者お玉花と雲、倶に葉端の尖より四五寸の間、両辺潔白にして鮮明なり、其内ここんりんは発芽の時より銀辺潔白にして、金稜辺の成長の後に現るヽに異なり、秋花お開く、弁の両稜も潔白にして葉と同じ、香気も高くして愛すべし、草蘭 和名かんらん花史左編、草蘭紫梗青花者為上、青梗青花者次之、紫梗紫花者又次之、余不入品、種時須将山土和均、甫成茶甌大、以猛火煆之、取出槌砕、舗以皮屑、納盆缶中、二八月分種漑之、以土煆者、為其根最甘恐蚯蚓傷耳、茎葉柔細、生幽谷竹林中、宿根移植膩土、多不活、即活亦不多開〓花、其茎葉肥大而翠勁可愛者、率自閩広移来也、非草蘭比、 広東新語、草蘭以短葉白幹者為上、其花肥、喜食霜雪、不資潅穢、冬月花お開く故に寒蘭と雲、暖地の深山に自生あり、移栽て育しがたし、花史に言へるが如し、花に品類多し、紫かんらん、青かんらん、紅かんらん等の称あり、葉痩て春らんに似て長く光あり、花茎細して弁も亦細し、香気甚清遠なり、冬月書斎中に置て清玩に堪たり、