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草木錦葉集

深山物産蘭の名目ある品植土〈并〉養法深山産のうち、南かくらん、椙蘭、檜らん、かもめ蘭、天鵝蘭、右は赤土一合、肥気なき土〈竹やぶの土よし〉二合、川砂五勺、予〈◯水野忠敬〉が秘事の水ねりにして、丸薬のごとく成土へ植る、かもめ蘭、天鵝蘭の二品は懸肥悪し、外の三品は水肥少しはよし、万年椙〈万年草とも〉もかもめ同様にてよし棒蘭、なご蘭、にうめん蘭、風蘭、ひも蘭、かや蘭、石薢、しこう蘭等の類は、土へ植ては悪し、へごお打くだき細かにして、岩ひばの根お細かにし少し交、鉢の下へ炭お多く入、右へごにて植る、又は措(ほく)へご等へ植るもよし、魚肥少しはよし、懸水日々沢山懸べし、麦蘭〈豆岩石とも〉豆蔦〈豆ごけとも〉等は、措へご石類へ付てよし、付るには鳥おとるもちお措、又は石類へ少しぬり付、其上へ蔓おもちへ付、はりがねか細きしゆろ糸にて巻、極蔭へ置、日々水沢山懸べし、山谷の産蘭の名目ある品〈并〉三角草植土双鶴蘭、〈さぎ草〉飛鶴蘭、柳蘭、千鳥蘭、〈岩ちどり野州の産〉右は古き茅家根の腐りたる塵すヽ多く付たるは別して吉、右の品干細かに振ひ一合、合土一合まぜ合せ植る、下水時々懸てよし、〈◯中略〉蘭の名目ある植土違ふ品〈并〉養ひ方鶴蘭、錦けい、岩石、花蘭、松葉蘭、えびね蘭、くま竹蘭、桜蘭、〈つるおのばす伝は、六巻目うの部にあり、〉右は合土三合、赤土一合、川砂一合交合せ植る、松葉の外下肥豆肥よし、蘭の名目ある品植土〈并〉養方桔梗蘭 鹿子島蘭 のし蘭 日光蘭 芙蓉蘭 茶蘭 鈴蘭 吉祥蘭 草竹(さうちく)蘭 紫蘭 萑蘭 紫錦蘭〈紫おもと〉右いづれも合土にてよし、紫おもとの外、下肥お用ゆ、豆肥もよし、栄蘭 渡り橄欖 並土よし、合土なれば別して吉、下肥お用ゆ、かん蘭は秋肥悪し、本蘭〈雄蘭の事也〉の根同じ成品は、植土皆同様にて吉、持方も同様也、