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重修本草綱目啓蒙
九/芳草
蒟醤 きんま(○○○)〈蛮名なるべし〉 一名蔞〈通雅〉 差葉〈八閩通志〉 相思葉〈広東新語〉 辛蒟〈通雅〉 蒟給〈同上〉 無留藤〈本草彙言〉 芙〓〈泉州府志〉 蔞葉藤〈広輿記〉 蔞藤〈一統志〉嶺南にては此葉に生の檳榔子と蚌灰とお包みて果に充て食ふ、これお入るヽ器お桂海虞衡志に檳榔合と雲、茶家者流にてきんまでの香合とて弄ぶもの是なり、一器三室のものあり、又三層にして香撞の如きものあり、皆外に細なる描花あり、享保年中に、此葉にて檳榔と蚌灰とお包み、蜜漬にしたるもの渡る、その葉の形秋海棠の葉の如し、即今ふうとうかづらと呼ものなり、これは四国九州豆州紀州海浜の崖に蔓延して生ず、葉は蕺菜(どくだみの)葉に似て厚く互生し、深緑色なり、切れば胡椒の香有り、故に世人胡椒或は〓苃りとす、並に非なり、京師にては冬月窖に入れざれば枯る、四月葉間に細き穂お生ず、長さ一寸余、細小白花お開く、子は累々として穂おなす、長さ一二寸、子は椒目の大さの如し、外に薄皮あり、色赤し、内に栗殻色の〓殻あり、その肉に仁あり、色白し、これお嚼めば味淡にして微辛く、香気〓苃に近し、先年蛮人に見せしに胡椒なりと雲、然れども形色気味胡椒に異なり、即土蔞藤にして蒟醤の下品なり、夏以後節ごとに根鬚お生ず、土中に入るものは鬚多くなり、土に遠ければ鬚一条のみ、故に節ごとに切れば、皆分ち栽べし、葉大さ二寸許り、或は四五寸、長葉あり、円葉あり、土蔞藤一名山蔞藤、〈広東新語〉