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袖中抄
十一
さくらあささくらあさのおふの下草はやくおひばいもが下ひもとかざらましお顕昭雲、さくらあさとは、麻の花は、しろき中にすこしうすすはう色あるあさのある也、それお桜麻とは雲也、又下人の申侍しは、くらあさといふ物なりと申き、くらあさとは、もしくら(苦参)らと雲物にや、それもぬのにおれば、それおもあさといふ歟、それにさもじ(文字)おくはへて、さくらあさといふにや、桜麻とかきたる所心えねど、万葉は書様ともかくもあり、石の根おも石金(いはかね)とかけり、当時よみよきやうに書也、さくらあさのおふと雲おも、或は桜麻の麻原とかけり、これは麻の義にかなへり、或桜麻の苧原ともかけり、これはいはれず、麻と苧と別の物なる故也、苧おはまおといひ、からうしともいふ也、