[p.1197][p.1198]
重修本草綱目啓蒙
十/湿草
苧麻 からむし(○○○○)〈和名抄〉 まお(○○) かつほう(○○○○)〈予州〉 しろお(○○○)〈土州〉 衣草〈和方書〉しらそ(○○○)〈雲州〉 やまそ(○○○)〈佐州〉 しろそ(○○○)〈肥前〉 しろは(○○○) しろほ(○○○)〈共に同上〉 ひうじ(○○○)〈播州〉 一名青麻〈附方〉 青花麻〈千金方〉他国には苧麻お栽ておお採る、京師には栽るものなし、野生多し、山苧野苧なり、のまおと呼ぶ、又ぐろうじ、〈城州笠置〉はづ〈予州〉の名あり、採て甫に栽れば苧麻となる、春宿根より生じ、一根叢生す、高さ四五尺、葉互生す、形楮(かうぞ)葉に似て岐なく背白し、集解に謂ふところの形状よく的当す、容の説殊に詳なり、夏葉間に穂お生ず、勃落(こなら)樹花に似り、一穂数枝、花最砕小なり、開く時は細黄粉散落す、後細子お生じて下垂す、落て自ら苗お生ず、此皮お剥ぎ水に渥して、外の粗皮お去り、内の白糸お取り、夏布の用とす、これお奈良そと雲、南都にて此おお以て布お織り、晒して四方に貨す、白苧(さらし)と雲、越後にて織るもの最上品とす、野苧麻葉お乾し、揉て綿お取用て能血お止む、その根打撲腫痛に効あり、生根お採り薑擦にて研り、紙にのべ痛処に占れば、骨節のいたみお治す、蒴藋(そくづ)接骨木の煎湯にて洗に勝れり、一種やぶまお(○○○○)あり、路傍に多し、葉苧麻より大にして両対し、背に白毛なく、皮に糸なし、穂粗くして直立す、此類数多し、一種あかめ(○○○)と呼者あり、一名さヽやきぐさ、きヽしぐさ、しヽやきぐさ、〈皆同名あり〉あかがしら、〈予州〉あかだ、〈仙台〉たも、〈南部〉くちえ、〈同上〉あかわた、〈越後〉山野共に生ず、葉の形野苧に似て小し、大さ二三寸、茎赤くして両対す、葉間に花お開く、苧麻穂に似り、是には皮に糸あり、奥州にては、織て足袋及頭巾に製す、此糸お南部の方言にくちえおと雲、頭巾に製したるおあかだ帽子、〈仙台〉くちえぼ〈つ〉ち、〈南部〉あかわたぼうし〈白川〉と雲、風お透さずと雲へり、市人この草の根おとりて、紫大戟に偽り、野苧麻根おとりて大戟と名け售る、皆大戟の偽物なり、