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農業全書
六/三草
麻苧(まお)麻苧おうゆる事、先苗地お寒耕し、いかほどもよくこなし、塊少もなく委しくこしらへ、濃糞お多くうちさらし置、二月中旬、麦畦のごとく畦作りし、横にせばく筋おかき、種子お薄く蒔、土おいかにも少おほひ、又其上に糠お少おほひ置なり、生出ては、先草ながら生立(そだて)おき、根よく出来て後、中お削りても痛むまじき時、かるき鍬にてさら〳〵と削り、草お殺しやがて糞お置べし、馬やごえ其外何にても多くおくべし、糞すくなければふとりかぬる物なり、種子お蒔て明る年、苗ばらひおして、又こえお多く入れ芸り中うちしおき、三年めより刈取物なり、猶冬雪霜に痛まざる様に、馬屋糞など一尺も厚くおほひ、春になりてはかきのけ芸り、又糞お入おきて、五月初め一鎌かり取、六月半又一鎌、八月一鎌、以上三度かる物なり、中の度お上とすべし、はぎとる事、中よりおしおれば、皮は二筋になりて、木は本末へげてのく物なり、さて其皮お日の当らざる所に置て、水に漬るか、池川なくば、井の水お汲かけてぬらし、竹刀お以て、内の方よりこけば、却て上の皮よくのく物なり、いかにも懇にこきて、其後上中おえり分、さらし干し上(あげ)て、百目宛お一把とするなり、是は芳野にて作りこしらへ立る大概なり、〈◯下略〉