[p.1201][p.1202]
重修本草綱目啓蒙
十四/蔓草
馬兜鈴 じやかうさう(○○○○○○)〈苗の名下同〉 むまのすヾかけ(○○○○○○○)〈和州〉 つんぼぐさ(○○○○○)〈播州、此実耳お毒す、故に名く、〉 ちどりさう(○○○○○)〈播州〉 むまのすヾくさ(○○○○○○○)〈片玉本草〉 むまのすヾ(○○○○○)〈実の名〉 すヾなり(○○○○)〈勢州同上〉 青木香〈根名〉 一名玉皇瓜〈薬譜、輟耕録及事物異名、皇お黄に作る、〉 雲南枝〈楊州府志、枝は根の誤なるべし、〉 天仙藤〈万病回春〉 兜鈴苗〈附方〉 冬児冬乙羅〈村家方〉馬兜鈴は実の名、土青木香は根の名(○○○○○○○○)、古方に青木香と雲は南木香なり、後世の方に青木香と雲は多は此根お指す、即土青木香の略なり、和名にも青木香と雲、故に和方に青木香と雲は、この根お用ゆべし、此草原野路傍に多し、苗山薬(やまいも)に似て春宿根より苗お生ず、色黒して衆草に異なり、長じて繁延し、葉互生す、山薬葉より厚く黒色お帯ぶ、長さ一二寸、切れば臭気多し、夏月葉間に花お出す、本筒にして末両弁に分れ、屈曲して馬頭の形の如し、紫緑色後実お結ぶ、長さ一寸許、闊さ六七分下垂し、外に薄き皮ありて包み、鶏卵の形の如し、皮の本ごとに各一糸ありて耬斗菜(おだまき)の花の形の如し、故に集解に開四系と雲ふ、熟すれば褐色中に薄扁子数多あり、形楡莢(にれのみ)及百合子の如くにして白色なり、一種大葉の者あり、長さ三寸許、増、種樹家に漢種の馬兜鈴と呼ものあり、春旧茎より葉お互生す、葉蒂長くして二寸許にも及ぶ、葉の形木防已葉に似て三岐おなす、中葉長さ三寸許、幅五六分、左右の岐葉円く短くして、僅に六七分に過ぎず、その欠刻深くして下漸く窄し、恰も正面に画ける鼻の状の如し、夏月葉間に下垂して花お開く、長さ一寸六七分、本は筒にして一寸許にして上に彎曲し、横に向て両弁お分つ、内に黒斑あり、甚異形にして比し象りがたし、花後莢お結ぶ、大拇指の大さにして末尖り、縦に六七線ありて淡茶色熟して自ら裂く、中に竪に薄皮お隔て、一分許の子数多くあり、灰色にして甚だ堅く、舶来の莢柔〓に子の薄片にして、猶軽虚なるに異なり、根は巨くして香あり、この草勢州志州には自生あり、漢種にはあらず、