[p.0012][p.0013]
成形図説
十七/五穀
曾婆〈続紀◯中略〉田家の常言に、麦と蕎麦と嘗相諍、麦曰、吾は畳八枚お蒙とも猶生抜べし、蕎麦曰、吾は三角の稜が一角地に就ほどならば、〓生べしとつのりしとかや、言は両種ながら、其発生の極て易お称り、〈◯中略〉農家諺に、すばるまむ時、蕎麦蒔と雲は、すばるは昂星也、〈此星の像、玉の装束の御統に似たり、故にすばると雲、〉まむ時は正中(まんなかの)時にて、秋〈の〉夜半子の頃、昂星(すばる)の天中する時分に、蕎お蒔べしとの伝なり、又曰、〓(すヽきの)穂の出初時お見当に、蕎麦お蒔ともいへり、凡風土に由て聊の遅速ありといへども、此ものは一候七十五日にして実熟也、さて甚霜お畏る、九月に早く霜降ば、田家切に此ものヽ傷むことお歎なり、かくぞ収獲の節ある種にしあれば、むかしより語嗣しよしも伝りけめ、