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重修本草綱目啓蒙
十二/湿草
藍 あい 一名染青草〈江南通志〉 青秧〈農甫六書〉 菘藍一名荼藍〈天工開物〉 蓼藍一名小藍〈万病回春〉 蓼淀〈物理小識〉 葼〈正字通〉 藍実一名青黛実〈郷薬本草〉凡そ単に藍と称する者は総名なり、大抵蓼藍菘藍(○○○○)の二種に分つ、其蓼藍は和名抄にたであいと訓ず、今はあいと呼ぶ、是に水陸の二種あり、倶に春種お下す、葉青蓼葉より闊大也、紫蓼(とうたで)の葉に似て深緑色、苗高さ一二尺、枝多して葉互生す、夏枝梢ごとに穂お成し花お開く、蓼花て同じ、花衰て子お結び紅お加ふ、城州東寺辺水田に栽る者は水あい(○○○)と呼ぶ、染家の用に入、上品とす、又阿州にては皆陸地に栽ゆ、苗お罨し茎お去り塊おなし、四方に貨す、これお阿州の玉あい(○○○)と呼ぶ、染家には下品とす、又享保年中に、唐山より藍の種二品渡れり、一は江南の大青(○○○○○)と称し、一は析江の大青(○○○○○)と称す、其江南大青は即集解に説ところの菘藍にして、救荒本草の大藍なり、苗の形油菜(あぶらな)に似て、葉厚く白色お帯ぶ、三月に枝梢ごとに四弁の黄花お開く、油菜に比すれば最小く三分許、花後小長扁莢お結ぶ、内に一子あり、夏月熟して根枯る、八月種下す、其析江の大青は即蓼藍なり、元来大青と雲ふは藍葉の一名なり、医学正伝に曰、藍葉は即大青葉、又本経逢原に曰、藍実は乃大青之子と、此等の説に従ふべし、十五巻大青小青の二条お別に出す、その説く所の草は和産詳ならず、其主治附方お詳にするに、皆藍葉の効なり、前の大青の条お合考べし、又時珍の説に、菘藍馬藍お二物と為は非なり、蘇容説に従ひ一物と為べし、呉藍木藍は詳ならず、増、阿州のあい玉は最上品にして他州に送り、染家の用とす、正月陸地に種お下し、三月に至て漸く六七寸なる時、壟甫に移し栽ゆ、六月土用に刈てその葉お取り、後水お澆て罨すこと数十日、搗て塊とす、紺色お染むるに上品とす、城州東寺辺の水あいは、浅葱色お染むるに上品とす、俗に京あさぎと称する是なり、