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草木六部耕種法
三/需根
大黄川弓白朮等の作法大黄は気候第七番の温暖地に応合する草なり、此物元来円珠根にて、植地の調理は、蔓菁お作る法に同じ、然れども植たる年には掘採こと無く、三年も其余も肥(ふと)らする者なるお以て、或は攅簇根の如く拡張(はりたす)こと有り、又此物は第七番以下頗霜零る微冷気候行るヽと雖ども、第十番以上の国土は此お作るべし、十番以下の寒地に作りたるは、仮令其根大に肥太する者も、毒気弱して下利の効なく、薬用に勝ざる者なり、且又大黄は此お掘採て乾揚に秘事ありて、此お掘採たる根お、直に烈火に投じて此お煨る、其煨適宜からざれば、第七番以上なる気候温暖の地に作りたる者と雖ども、瀉利の性効あること無く、此お煨適宜火度は紙筆の述べき所に非ず、数々自煨て能く会得すべし、此お作る法は、真土お蔓菁お作る畑の如く耕し、此に木お焼たる灰と臘土〈臘土製法は培養秘録に詳なり、上の総論にも其略法お出せり、〉お各半に調合したるお、一段に十荷づヽ耕錯(きりまぜ)たるは殊に宜し、春分頃一歩二畦に作りて上お平し、一尺五六寸隔に種子一箇づヽ五目に植え、芽出葉の生じたる後は、時々盛養水お灑べし、葉茎甚大に繁衍する者なり、此に根お肥太するの法お施し行ひ、三年目に掘採べし、今九州にて作る者に往々上品有り、種子は旧根の大枝、或は旧根お適宜〈拇指の大より少しく長すべし〉裁割(たちわり)て、檞櫟等堅木の灰お割目に被(まぶ)して、三四日置て植べし、種根は漢種に非ざれば用ふべからず、我家法お用て漢種の大黄お作るときは、三年に一段三百斤余お得べし、金一両十五斤に売とも二十一金と為る、然れば年々七金の産業なり、