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古今要覧稿
菜蔬
すヾしろ 〈おほね〉 〈蘿蔔〉すヾしろ一名おほね、一名つちおほね、一名かヾみくさ、一名こころぶと、一名だいこんは、漢名お蘆菔、一名蘿蔔、一名来服、一名萊菔、一名蘿葍、一名蘿白、一名蘿〓、一名蘿篳、一名夢卜子、一名羌精、一名唐菁、一名蘆〓、一名〓〓、一名〓〓子、一名葖、一名葖草、一名葖子、一名雹葖、一名菔子、一名紫花菘、一名温菘、一名楚菘、一名秦菘、一名玉本、一名土〓、一名地〓、一名大菜根、一名篤旅馬と雲、此種は民間日用のものにて、四時ともにこれあり、春生ずるものお俗に三月大根、一名つばくろ大根、一名ほそね大根といひ、漢名お楊花蘿蔔、一名破地錐といひ、夏生ずるものお夏大根、漢名お夏蘿蔔、一名夏松蘿蔔、一名夏生といふ、近郊練馬清水村のもの、その名四方にしられたり、また秋生ずるものお秋大根、漢名おまた蘿蔔と〈此蘿蔔は即北方の土名なり〉いひ、冬生ずるものお冬大根、漢名おまた〓と〈此土〓もまた北方の土名なり〉いふ、いはゆるすヾしろ以下の諸名、おほくは冬生ずるおほねの名なり、冬生ずるは夏秋に生ずるよりも、その味殊に勝れたるによりてなり、〈◯中略〉   釈名すヾしろ、〈河海抄、拾芥抄、公事根源、年中行事、〉按に延喜式に、蔓根須々保利六石、菁根須々保利一名とみえ、また新撰字鏡に、葅苴同側魚反、須々保利とみえたり、これによれば、皇朝にてすヽほりお作るに、蔓根菁根の二種お用ゆるは、古よりのならはし也、河海抄以来このおほねおさして、すヾしろといひしは、即すヽほりしろの中略にて、そのおほねお以て、蔓根菁根の代とせしによりて、此名は出来しなり、然るお春の七種考に、酒々代あるひは鈴白に作る、すヾは涼しき義、しろは白の義なりといひ、又すヾなにかはるといふ義なりともいへるは、その説いかヾあらん、