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古今要覧稿
菜蔬
こほね 〈こおほね 幅 野蘿蔔(○○○)〉こほね一名こおほね、一名弘法大根(○○○○)は、漢名お葍、一名〓、一名蘿葍、一名野蘿葍といふ、此種は西国及び陸奥会津等の野甫のほとり、或は道傍にもおのれと生出るものにて、その茎葉すべて蘆菔に似て小さし、根もまた相似て、長さ僅に四五寸のものなりといへども、春時これお採て奄蔵し食ふに、その味美なり、また家甫につくれるものもあるよし、大和本草に見えたれども、すべて江戸近き田舎には、たえて此種ある事おきかず、大和本草雲、野蘿蔔、今按に西土の小大根なり、波多野大根の一類別種にて、波多野大根はこおほねより大なり、江戸に多く出づ、ともに野甫に生ず、人力お用ひず、種おちて自然に生ず、又甫にもつくる、二種共に脆美なり、味辛し、塩に漬け又蒸て煮て熟し易し、救荒野譜に言ところの如し、根は地上に出ず、常の大根に異り、春蔬の佳品なり、凡野蘿蔔、三月大根、もち大根は、蘿蔔の既に老て無味時に、盛に美なり、