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永正五年狂歌合
七番 左正月は牛房ばかりの尾おふりていなむとせしおくるヽ大根〈◯中略〉左の大根くるヽといふ事、此比世にもてあそび申狂歌に侍るべし、かヽる事の濫觴は、家々の相伝、説々もおほく侍るべけれども、先当流の口伝の一説しるし申べし、何の御代にかありけむ、かた山ざとの風さふらひ、きはめていやしき姿なるありけるが、大根おのみこのみてけるお、京童のにくみ笑、大なる大根おいかほどもあたへて、神変奇特おくふ人かなとほめあげて、嘲哢するおもしらず、さては我こそ大根くひて、天下無双の名人なれと、高慢してくふほどに、口より血おながし、大あせ水になりてくひたりけるお、わらひ草にしてくはせけるより、人のさしてもなき事おほめあげ、かしづきなどするお、大こんくるヽと申とうけ給及侍りしなり、