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成形図説
二十一/菜
安袁奈(○○○)〈古事記 即菘菜なり、万葉集には菁菘お訓り、凡菁菘の中、根の有無あり、根あるおば俗に蕪菘(かぶな)と雲、菘と蕪と本同類にして、葉の甘苦根の大小なる一間お隔つ故に、順抄に蔓菁お安袁奈とす、誤れるとはいふべからず、〉 水菜(みつな/○○)〈(中略)他所にて是お京菜と呼ぶ、又近江菜、天王寺菜、下総菜等、皆同種にして小異あるのみぞ、〉 高菜(たかな/○○)〈◯中略〉 白茎菜(しらくきな/○○○)〈本藩の産最勝れり、豊前にて平茎(ひらくき)と称べり、是図経の白菘也、又沖縄に産るは葉極て広く、烟草の大に過ぐ、南人呼ていんしう菜といへり、◯中略〉 冬菜(ふゆな)〈◯中略〉凡春の初種お下し、三月に苗生て二葉なるお卵割菜(○○○)と雲、〈◯中略〉又其二三寸延長おば鶯菜と雲、鶯の来鳴頃に発生れば也、凡は菜の細短なるお子菜(こな)と称べり、〈◯中略〉京畿の水菜は、九条東寺の近郊に産(いでく)るお真とせり、一本より数十茎お生じ、味淡美にして滓(かす)なし、春月お盛とす、関東にて小松菜(○○○)といふは、取わけ下総国葛飾郡小松川に作る者名高し、茎円して微青く、味また美し、今本所亀井戸より隅田川辺に皆作れり、又本藩の白茎菜(しらくきな/○○○)は、茎扁大く、真白し、味淡美にて雪霜お経し後は愈よろし、清人嘗て此ものお麒麟菜と目けり、本草に二種ありといふは、此両品の種なるべし、天王寺菜(○○○○)は、浪華わたりに名たヽるもの也、日野菜(○○○)は、淡海日野の良産なり、茎柔にして根ふとく、紫色たり、畿内にて冬月その根おつらね用ひ、或は茎菜お陰乾にし収蔵む、名て懸菜(かけな)とも、乾菜(ほしな)ともいふ、又奄〓(しほかうぢ)におさめぬるお茎葅(くきづけ)と雲、京菜殊に美く、年お経しは愈よろし、近江にてつけるお近江葅とす、風韻賞すべし、〈◯中略〉又関西に掘入菜(○○○)あり、北陸に三月菜と呼び、関東にて葅菜といふ、実は同種なり、晩菘(おそな/○○)あり、葉の色深緑に光あり、味いとすぐれたり、〈◯中略〉紫菘(○○)は葉色紫なり、又牡丹菜(○○○)、或は和蘭菜(○○○)と雲あり、根は地上に抽て幹立し、葉縹色にして厚く懶(やはらか)く、白粉お糝しが如し、和蘭地方の葉色皆しかり、又一種和蘭菜あり、葉細尖り、茎に近く両岐あり、之お折れば白汁出り、されど菘類に非ず、