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農業全書
三/菜
芥からし此たねも色々あり、先青紫白の三色あり、又高ながらしとて、茎甚高く、枝葉ことの外さかへ、葉の広き事芭蕉のごとし、うゆる法、八月苗地お度々打返し、能こやし薄く蒔、しげき所は間引さり、中おかきあざり、糞水お時々そヽぎ、苗四五寸ばかりの時、肥地お畦作りし、横筋お切、其間一尺ばかりに一本づヽうへ、濃糞おかけ、灰糞其外水糞など、力の及びいか程もそヽぐべし、冬春葉おかき、清く洗ひ乾し、水気なくなりて後こもに包み、四五日もむし、少々色付たる時取出し、塩漬にし食すべし、春月農家膳に用ひて、魚味お助くべし、くヽたちお折取て漬たるは猶宜し、されども子おおほくとらんとならば、くヽたちは折べからず、四五月よく実りたる時、刈干てもみ取べし、但すりがらしには、葉のひろきはよからず、常に料理に用るには、葉せばく其実紫と白きが実多して味もからし、薬種には白きお用ゆ、又二月芥菜おうへて、葉おかき食し、五月諸菜皆かれたる時も、是はよくさかへて、菜の絶間お用るゆへ、人数多き家は、取分是と韭とおおほく作るべし、中にも芥菜は菜に用るのみならず、料理の余りは、子も油となすべし、是両様の利潤あり、作るべし、