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源氏物語
五十三/手習
この人〈◯浮舟〉は猶いとよはげなり、みちのほどもいかヾものし給はん、いと心ぐるしきことヽいひあへり、車ふたつして、おい人〈◯僧都母〉のり給へるには、つかうまつるあまふたり、つぎのには此人〈◯浮舟〉おふせて、かたはらにいまひとりのりそひて、道すがら行もやらず車とめて、ゆ参りなどし給、ひえさか本に、お野といふ所にぞすみ給ける、〈◯中略〉河にながしてよといひし一言よりほかに、物もさらにの給はねば、いとおぼつかなく思て、いつしか人にもなしてみんと思ふに、つく〴〵としておきあがるよもなく、いとあやしうのみものし給へば、ついにいくまじき人にやとおもひながら、うちすてんもいとおしういみじ、夢がたりもし出て、はじめよりいのらせしあざりにも、忍びやかにけしやく(○○○○)ことせさせ給ふ、