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農業全書
三/菜
油菜油菜一名は芸薹又胡菜と雲、〈其始だつたんより来る、ゆへに胡菜と雲となり、〉其葉茎かぶらな水なに同じ、能こやしても、その根大きにはならず、又其味もおとれり、されども田甫に蒔て栄へ安く、虫も食はず子多し、油お搾に利多きゆへ、農民多く作る、三月黄花おひらき、さながら広き田野に、黄なる絹おしけるがごとし、其実り麦に先立て熟し、跡の地早くあきて、藍其外夏物お作るに便よし、総じて麦ばかり多く作りぬれば、刈取事一度につどひ、跡のこなしも一同に仕廻なりがたき考おなし、油菜お作るは一つの手立なり、右のゆへ所により、麦の三ヶ一は油菜お種る里もあり、是お作る法かぶらなに同じ但秋より地おこしらへ糞して、苗おしたて置、十月の比別の田畠に移し種たるは、よくさかへて子多し、されども農人いとまなくして、苗種ならざるは力なし、蒔付にすべし、しかれども苗うへの利多き事お考へしるべし、かぶらな水なも、皆その子に油あり、されども油菜の栄へ安くして、子おほきにしかず、