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大和本草
七/園草
岩〓花 倭俗の名也、其草の形状葉めぐり連りて、恰〓花の開けるが如し、異草也、或曰仏甲草是也と、非なり、本草所言と不合、実おまけば能生ず、仏甲草 本草綱目石草類所載お考るに、今京都及諸州に一(/○)夏(げ/○)草(/○)と雲物あり是也、又無根草(○○○)と雲、根鬚なし、葉は細長くして尖れり、茎お折りて土に挟めば能生ず、茎葉似馬歯莧、其余は皆本草に所言の如し、庭間又は盆にうふ、是お岩〓花と訓ずるは非也、仙人絛(のびきやし) 此草火にやけざるゆへに、国俗野火消(○○○)と名づく、葉は馬歯莧に似て高一尺に不満、無根鬚、挟めば能生ず、其茎自折而落能生ず、実亦落而能生ず、四五月黄花お開く、其茎如絛枝に有三股、盆に栽て可玩、酉陽雑俎十九巻曰、仙人絛無根蒂生石上、状如同心蒂、三股色緑といへり、仏甲草に相似て不同、此草土に不栽して数根お合せ、空中陰処にかけ置、数日に一度水おそヽげば、常に生じて不枯こと、風蘭の如し、仏甲草も亦同、仏甲草は葉小長く末尖る、仙人絛は葉小にして円し、花は同、又根鬚なく活やすき事も同、或これおいつまで草と雲、久しく不枯故に名づく、然どもいつまで草はつたに似たり、壁に生ず、与此不同、