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重修本草綱目啓蒙
十六/石草
虎耳草 ゆきのした(○○○○○) きじんさう(○○○○○)〈筑前〉 いどばす(○○○○)〈泉州〉 きんぎんさう(○○○○○○)〈石州〉 いはかづら(○○○○○)〈上野〉 いはぶき(○○○○)〈越前〉 一名金糸荷葉〈女南甫史〉 葉下紅〈百病全方〉 金糸荷〈花暦百詠〉 旱草〈南寧府志〉 蟹殻草〈秘伝花鏡〉 金線草 金糸草〈共同上〉 虎需草〈靖江県志〉 獅子耳〈汀州府志〉 耳草〈証治準縄〉 猪母聹 虎聹草 獅子聹〈共同上〉山谷陰湿石上に生ず、又市中にも多く栽ゆ、甚繁茂し易し、葉は円扁にして蟹殻の如し、周辺に浅岐あり、質厚く面深緑にして紫色お間へ、紋脈白色にして紫毛あり、背は毛なくして淡紫色、一根に数葉布生す、夏月茎お抽ること長さ一尺許、紫毛多し、花多く穂おなす、其形白色の二長弁下垂し、二つの短小弁上に並びて品字おなす、粉紅色にして紅点あり、一種粉紅花の者あり、甚希なり、共に根上に細紅線お出し、四辺に引くこと甚長し、処処に小葉お生じ、後鬚根お出し、分れて数窠となる、一種春のゆきのした(○○○○○○○)は、葉緑色にして紫ならず、春中花お開く、形小にして白色、後実お生ず、又一種いはぶき(○○○○)は北国に産す、面背共に緑色にして毛なし、葉大にして橐吾(つわぶき)の如し、花小く穂長大にして枝あり、一種ゆきもよう(○○○○○)は葉緑色にして深岐あり、秋花お開く小にして数多し、又長葉なる者あり、一種やつでゆきのした(○○○○○○○○)は、葉緑色にして刻欠あり、つたもみぢの葉に似て厚く柔なり、秋に至て花お開く、弁瘠て大の字の如し、故に花戸に名けて大文字草と呼ぶ、一種弁直に垂れて斜ならずして、大の字に似ざるお人形草(○○○)と呼ぶ、共に花後実お生ず、一種やまゆきのした(○○○○○○○)あり、一名ながゆきのした、雌ゆきのした、ちやるめるさう、幽谷渓澗に多し、葉長薄尖り、細歯有て杏葉の如し、大さ二三寸、色緑にして紫色お帯ぶ、一根に叢生す、茎葉に紫毛あり、春茎お抽づ高さ一尺許、花は多く穂おなす、弁なくして短紅糸円布す、下に五弁の蕚あり、その蕚略喇叭(ちやるめる)に類す、故にちやるめるさうと呼ぶ、増、やつでゆきのした(○○○○○○○○)と、大文字草は別種なり、混同するは誤なり、大文字草の葉は細長にして、末に欠刻あり、やつでゆきのしたの葉のもみぢの如くなるに異なり、一種ちやるめるさうの形に似て、甚毛刺あるものあり、くさいわばり(○○○○○○)と呼ぶ、