[p.0093][p.0094]
重修本草綱目啓蒙
八/山草
升麻 とりのあしぐさ(○○○○○○○)〈延喜式〉 うたかぐさ(○○○○○)〈和名抄〉 あはぼ(○○○) みづふで(○○○○)〈肥後〉 さらしな(○○○○) いわだら(○○○○)〈越後〉 いわんたいら(○○○○○○)〈佐州〉 もくだ(○○○)〈同上〉 一名既済公〈輟耕録〉 雉脚〈村家方〉升麻の花は粟の穂の如くにして白色、筆頭の形に似たり、故にあはぼとも、みづふでとも名く、春宿根より新葉お叢生す、凡そ三枝九葉お一葉とす、又九枝二十七葉にもなる、その一葉お離せば地錦(つた)の葉の形の如し、厚くして光沢あり、茎は細く〓く光ありて粟の稈の如し、夏月長薹お抽て秋の末に至りて花お開き、長き穂お成す、肥たるものは穂に数枝お分つ、花大さ三分計、六弁、初は白色微紅、開けば白くして内に白蕊多ありて糸の如し、満開すれば弁は見へずして蕊のみ見ゆ、弁もまた早く脱して糸のみ残れり、市に粥ぐ根は、唐升麻お上品とす、根大にして外黒く内白、是鬼臉升麻なり、朝鮮お中品とし、和の升麻お次とす、和の升麻の中に数品あり、根色黒きお上品とす、日光升麻は根大にして色黒し、唐よりは色浅き故焼黒くしたるものあり、日光升麻の葉は狭窄にして、苗高さ五六尺に至り、枝お分つて花お開く、薬四にて和の升麻の内の上品とし、唐に次ぐとす、又野からまつさうの根お焼、黒くして偽るものあり、故に日光の土人は、野からまつさうお升麻と呼ぶ、又諸州の深山、及江州伊吹山の産は、根細く外黒内青く堅実にして味極て苦し、これお薬舗にて真の升麻と雲、是鶏骨升麻なり、唐山にてはこれお佳品とす、又此外大葉升麻三葉(○○○○○○)升麻(○○)あり、みなあはぼの一種なり、古は升麻おとりのあしぐさと訓ず、今にては別に一種の草おとりあし升麻(○○○○○○)と雲ふ、此草向陽の山に多し、加条(むく)葉に似たるもの九枝二十七葉ほどつくもの一葉なり、夏薹お抽て花お開く、真の升麻より早し、穂は長大にして枝多く花数甚だ多し、花は猶細小にして一分に盈たず、色白し、又淡紅色桃紅色の者あり、此おあはゆきさう(○○○○○○)と雲、此に小葉の者あり、葉の枝数あはゆきさうより又多し、其余形状同じ、これおなつゆきさう(○○○○○○)と雲、花は白色亦淡紅色の者あり、又あはもりさう(○○○○○○)、一名あはもり升麻と雲あり、能州にてよめおどしと雲ふ、苗なつゆきさうより短小なり、葉細長くして当帰葉のごとく厚し、花はなつゆきさうより早く開く、とりあし升麻は根皮赤黄色又赤色なり、故にあか升麻と雲、古は薬四にこれお売る、ぼうで、くヽりでと雲あり、又皮お削りたるお、けづり升麻と雲へり、即集解に謂ゆる小升麻一名落新婦にして、升麻の下品なり、そのあはもり升麻は又其下品也、又古は金線草(みづひきさう)の根お升麻に偽り売る故に、たで升麻みづひき升麻の名あり、細葉升麻の嫩葉お日光にては菜とし食ふ、故にさらし菜と呼ぶ、花戸にてやさい升麻と名く、