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重修本草綱目啓蒙
十一/湿草
瞿麦 とまりぐさ(○○○○○) なつかしぐさ(○○○○○○) ちヽこぐさ(○○○○○) ひくれぐさ(○○○○○) とこなつ(○○○○)〈以上古名〉 なでしこ(○○○○)〈古今通名〉 かわらなでしこ(○○○○○○○) やまとなでしこ(○○○○○○○) ちやせんばな(○○○○○○)〈奥州〉 一名聖〓松〈輟耕録〉 句麦〈通雅〉 地麪〈品字揃〉 石竹一名錦竹〈閩書、南産志、〉 繍竹〈秘伝花鏡〉此草山野に極て多し、葉細長して深緑色、両々相対す、夏秋の間花お生ず野生のものは皆淡紅色なり、山生のものには希に紅花のものあり、共に花後小円長角お結ぶ、内に小扁黒子あり、熟すれば角頂自開き、風に随て子落つ、此子お収て薬用に入る、一種薩摩種と呼ぶ者は、花猶大にして、単葉千葉紅白紫深浅間色数品あり、観るに堪たり、此種お下して花色よく変ず、野生の者は然らず、時珍洛陽花と雲ふ者は、即薩州種の瞿麦なり、故に通雅に時珍の説お駁して、至曰石竹、即洛陽花即非也、瞿麦則是野生非洛陽花、此必以洛陽錦為瞿麦、猶北人以虞美人花為鸎粟也と雲り、又俗に石竹と呼者あり、即漢名の石竹なり、和名からなでしこ、此も亦とこなつと雲ふ、野生なし、家園に多く種て花お賞す、色に数品ありて甚観るに堪たり、花弁みな鋸口なり、瞿麦の弁の端細に分れて、糸の如なるに異なり、千葉の者お十姉妹、〈河間府志〉と雲ふ、同名多し、ぼさついばら及鶺鴒、又一種の鳥に十姉妹の名あり、古より瞿麦一名石竹とす、故に方書に石竹子と雲者皆瞿麦子なり、後世は分て二種とす、今本邦にも二品あり、然れども古方の石竹子は瞿麦お用ゆべし、〈◯中略〉増、一種白山の産に、ふつめなでしこ(○○○○○○○)と雲ものあり、高さ八九寸、形容尋常の者に同く、其花白色千弁にして数弁相重畳し、毬状おなす、甚だ美なり、又一種矮生の者あり、江戸なでしこと呼ぶ、高さ六七寸、形状尋常の者に同くして、花に白色又淡紅色にして赤心、白花にして紅斑黒心等の品あり、