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重修本草綱目啓蒙
十九/柔滑
繁縷 はくべら(○○○○)〈和名抄〉 はこべら(○○○○)〈古名〉 みきくさ(○○○○)〈古歌〉 はこべ(○○○) はべら(○○○)〈勢州〉 あさしらげ(○○○○○)〈加州、羽州秋田、〉 ひづり(○○○)〈芸州、石州〉 へづり(○○○)〈讃州〉 ひづる(○○○)〈雲州〉 ひんづり(○○○○)〈丹波〉 まひづる(○○○○)〈備前〉 へんづる(○○○○)〈若州〉 むしつり(○○○○)〈予州◯中略〉庭際路傍に甚多し、四時常にあり、春夏猶盛なり、方茎地にしきて蔓の如し、内空して一つの粗縷ありて強し、葉は両対す、形楕にして尖り、長さ一寸余、瘠地の者は至て小く、肥土の者は長さ二寸なるもあり、うしはこべ(○○○○○)と雲、皆正二月花お開く、暖地にては冬も花あり、又夏秋にも旋花お開く、茎頭に多く聚り生ず、大さ三分許、その弁狭細にして白色、十弁なれども五弁の如く見ゆ、中に十蘂あり、後小房お結ぶ、内に小黒子あり、落て生じ易し、一種おほやまはこべ(○○○○○○○)あり、一名つるはこべ、とうじんかづら、〈紀州〉なんばんはこべ〈肥前〉つるせん、〈大阪花戸〉えんめいさう、〈播州姫路花戸〉こんばるさう、〈摂津池田花戸〉山中に生ず、春旧根より出、藤蔓甚長し、葉形細長にして、女蔞菜(さつまにんじんの)葉の如し、両対す、夏に至り枝梢ごとに花お開く、五弁大さ銭の如し、弁の端細く剪れて石竹花の弁の如し、故につるせんと雲、淡黄色、花後円実お結ぶ、大さ南天燭の子の如し、熟して色黒し、内に小黒子あり、一種やまはこべ(○○○○○)あり、葉円尖にして大さ四五分許、茎の長さ四五寸許、頂に一花お開く、大さ四分許、白色なり、一種ゆきのした(○○○○○)あり、一名こなすび、路傍に多く生ず、葉大さ四五分許、形円にして厚く両対す、一根に数茎出、長さ四五寸蔓に非ず、夏葉間ごとに花お生ず、五弁にして黄色、形酢漿草(かたばみの)花に似たり、後小実お結ぶ、円にして蒂あり、形茄子の如し、黄花繁縷是なり、深山に生ずる者は藤本(つるだち)にして長く、茎に縷あり、花葉も大なり、四中に生ずる者は、小にして茎に縷なし、