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草木性譜

蓮池沼に生ず、其藕泥中お横行す、其性大率歳閏に遇ば、十三節毎に十二節お生ず、是一歳の月数に順り、初旧藕の一節毎に両芽お生ず、其一は晩春先づ銭荷お発し、一は藕芽お生ず、其藕芽の末に亦両芽お生ず、其一は藕荷にして水面に浮き、一は嫩藕お生ず、其嫩藕の末に亦両芽お生ず、其一は芰荷、一は藕、此の如く二三葉水お出れば節より小藕お生じ、藕荷芰荷お発す、亦藕末に三芽お生ず、其一は芰荷、一は莟萏、一は藕お生ず、後節より小藕お生ずること始の如く、一節毎に此のごとし、其節に鬚蒻お生ず、其藕細く泥の浅お横行し、秋に至り花葉尽れば即太くして泥の深に入る、食用にする者是なり、其葉陽に随ふ、其藕茄中葉脈皆孔あり糸あり、其花十六七弁、薄紅色縦文あり、陽に随て旦に開き暮に至り相合し、明旦復開き、二日にして即謝す、蓮蕊鬚黄色甚だ清潔、芬香旦に発し午時に収る、蓮房初黄色後緑色、熟すれば黒色、形蜂房に似たり、蓮実甚だ堅〓、秋に至り、熟すれば自づから飛ぶ、其殻頭の傍に必一点あり、其子生は初苞なく、先づ二葉生ず、即苦〓実中上に附て倒にこれ有り、苞生じ亦二葉生じ、心中より嫩藕お生じ横行す、是藕の初なり、凡蓮に数種あり、皆変種なり、薄紅色の者と同種すれば、変種は必枯る、秘伝花鏡雲、或曰、春分前種一日、花在葉上、春分後種一日、葉在花上、春分日種則花葉両平と、猶自生の者は其花葉上に秀づ、格物叢話雲、荷花有重薹者、有双々者、世人指以為瑞、蓮は群花品中に於て第一品、清浄潔白なる者これに如ず、故に不清の水お灌ば即枯る、又塩気お悪む、周茂叔愛蓮説雲、蓮花之君子者也と賞せずんばあるべからず、