[p.0146]
輶軒小録
千葉蓮(○○○)之事此冊書写の折節、井上毅斎氏の甥来り語る、江州益須郡田中村と雲ふあり、其土豪田中氏園中に池あり、珍しき蓮おうえ伝ふ、其様子お尋ぬるに、大白蓮にてわたり四五寸も有り、一茎の上に九の花房あり、みちあうて咲く、小なるは或は七或は三あり、中元の比より咲き初め、八月上旬まで咲く、其花落つることなく、来年まで枯れ残る、万葉蓮と雲ふとなん、或雲、此花とくとは咲き切らずと也、即群芳譜お見るに、千葉蓮と標し、分注雲、花山有池、産千葉蓮花、服之羽化、今人家亦有之、然頭重易萎、多難開完となり、詳ならねど大様此なるべし、