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古今要覧稿
草木
つまべに(○○○○) 〈くちべに(○○○○) へりとり(○○○○) 錦辺蓮(○○○)〉つまべに、錦辺蓮、其花白くして辺紅なり、此蓮紅蓮白蓮の中に植れば、皆つまべにとなるといへり、今は多くあれども、是唐蓮なるべし、地錦抄に、唐蓮花、白きは大りん、くちべには小ぶりといへり、ある人の池中に、つまべに多く繁茂して、火しく成りし故、蓮堀に命じてほらせんといひしが、此つま紅は、葉の存せしうちはゆるし給へといひて、堀らざりし故、いかにと問ふに、此つま紅の茎の刺は、常の蓮より尖り強くして、肌お破るにたへ難し、先年この蓮お堀りて難儀せしといへりとぞ、つまべには処々にあり、秘伝花鏡所載の錦辺蓮にして、白色毎弁辺、上有一線、紅暈或黄暈といへる種にして、錦辺蓮なれども、張木威は絳辺蓮といひて、七言律あり、又或黄暈といへるは未だ見ざれども、菊地容斎曰、京の清水観音境内に、弁財天の小池中に黄辺の白蓮あり、日に映し見れば、銀の花弁に金の幅輪お鏤たるごとしといへり、