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万葉集
十六/有由縁并雑歌
詠荷葉歌蓮葉者(はちすばは)、如是許曾有物(かくこそあるも)、意吾麻呂之(おきまろが)、家在物者(いへなるものは)、宇毛乃葉爾有之(うものはにあらし)、献新田部親王歌一首勝間田之(かつまだの)、池者我知(いけはわれしる)、蓮無(はちすなし)、然言君之(しかいふきみが)、鬢物如之(ひげなきがごと)、右或有人、聞之曰、新田部親王出遊于堵裏、御見勝間田之池、感緒御心之中、還自彼池、不忍憐愛、於時語婦人曰、今日遊所見勝間田池、水影涛涛、蓮花灼灼、可憐断腸、不可得言、爾乃婦人作此戯歌、専輒吟詠也、久堅之(ひさかたの)、雨毛落奴可(あめもふらぬか)、蓮荷爾(はちすばに)、渟(たま)在水乃(しるみづの)、玉爾似将有見(たまににたるみゆ)、右歌一首、伝雲、有右兵衛、〈姓氏未詳〉多能歌作之芸也、于時府家備設酒食饗宴府官人等、於是饌食盛之、皆用荷葉、諸人酒酣、歌舞駱駅、乃誘兵衛雲、開其荷葉而作此歌者、登時応声作斯歌也、