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花壇綱目

牡丹植養の事一牡丹植の法は、九月中旬より十月中旬の比まで、分植て可然なり、掘て植時、根の高卑其筋お見分、土お間々へ能入て、根のいごかぬやうに土おかけ植る、土高く置あげて、其うへに植て根先のさがるやうに植べし、土はしらけたる赤土に、砂お十分一くわへ、下肥お多く切まぜ、百日計置て糞気くさりまぜて、土の肥たる時こまかにくだきふるい用なり、霜月初よりくわだんに馬のふみたるわら、馬糞どもあつく置べし、根廻ほり置は悪し、正月の末二月中比雪きへて、右のわらおとるべし、砂計に油糟壱升程まぜて、壇にちらし、塵雉のなきやうに掃て置なり、花の時は蘆簾にて日覆おして可然也、花の後にはとるべし、夏は茶がらお根廻に置て、晩景に白水あるひは清水おも湿ほどそヽぎてよし、牡丹のめにどろ付たる所あらば、白水にてあらふべし、木に白虫付時是お不洗ば木枯る也、実の蒔やうは、六月土用過七月初に実お取則蒔なり、茶がら壱升に土おまぜ一粒づヽ並て、其うへに茶がら五分ほどかけて、蛤貝かぶせて置なり、二月中旬の比、右の貝おとるべし、