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塵袋
三/草
一芙蓉芍薬と雲芍薬は何物ぞ芍薬に二あり、芍薬と木(ほく)芍薬となり、此の辺につねに牡丹と雲ふものは芍薬也、木芍薬と雲は木牡丹とて、いろ深紅にて一えなるが、黄なる色のあるものヽ事歟、白芍薬と雲ふはしろきはなのさくなるべし、うるはしき牡丹は此の土にいまだわたらず、宋人ことに秘蔵するうへに、大にしてもたりにくき故歟、牡丹は草に非ず、木の如していつもくきのかれうする事なし、ふるき枝よりめぐみいづる也、其れに花葉お生ず、芍薬の如くとしごとにつちよりわかばへ出る事はなし、芍の一字おばちやくとよむやうあり、調美の詞に芍薬醤と雲へり、是は芍薬おしほにつくるには非ず、芍薬の根には五味お具足すと雲ふ事、医書の中に見えたり、此のゆへに気味おとヽのへたる心おいはんとては、芍薬の和と雲ひならはせり、芍薬の醤と雲ふも、醤の気味およくとヽのふる心お表するなるべし、調味の方にはちやくとよむ、又芍の字おてき(都歴反)とよむ事ありかくよみつれば非芍薬、〓子の名なり、してうとよむやうあり、かくよみつればほやの名也、木におうる蔦也、