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重修本草綱目啓蒙
九/芳草
芍薬 えびすぐさ〈延喜式〉 えびすぐすり〈和名抄〉 ぬみぐすり〈同上〉 かほよぐさ〈歌書〉 今は通名 根一名錦繍根〈輟耕録〉 解倉〈事物紺珠〉 養性〈典籍便覧〉 黒辛夷〈同上〉 黒牽夷〈事物異名〉 攣夷〈広雅〉 辛夷〈琅邪代酔編、こぶしと同名異物、〉 花一名吐錦〈尺牘双魚〉 嬌客〈典籍便覧〉 掬香瓊〈同上〉 玉盤盂〈事物異名、典籍便覧〉 冠芳〈輟耕録〉 近客〈華夷花本雑考〉 艶友〈同上〉 何離〈三才図会、女南甫史、〉 可離〈古今注、典籍便覧、〉 殿春客〈花鳥争奇〉 婪尾春〈典籍便覧、酒宴の終に三盃飲むお婪尾酒と雲、〉 大朴花〈郷薬本草〉 花相〈牡丹釈名の註に、牡丹お花王と雲、芍薬お花相と雲ふ、〉 牡丹近侍〈事物紺珠〉 菩薩面〈同上〉 増一名解倉〈千金翼方〉 没骨華〈王氏画苑〉唐山にては楊州の芍薬、洛陽の牡丹と称して天下の名物なり、その品名楊州芍薬譜に三十一種お載す、群芳譜に三十九種おのす、秘伝花鏡に八十八種おのす、年お逐て幻変すること知べし、和産も亦然り、その品類は花壇綱目、花壇大全等に詳なり、薬に入るヽは、花甫の根お以て糞力お仮らずして栽るもの、生乾にして用ゆべし、薬舗にてこれお真の生乾と呼ぶ、城州長池より出す、ただ粗皮お去て乾たるものなり、又唐様と称するは、漢渡に擬して沸湯に浸し過し、乾すゆへに性味薄して生乾に及ばず、根の赤白は花の色に随と、時珍の説に雲へり、然れども舶来の赤芍薬は皆粗皮お去らずして乾たるものなり、白芍薬は皆皮お去り蒸乾すものなり、正字通曰、旧以花色分赤芍白芍、或言根曝乾為赤芍、刮去根皮蒸乾為白芍、白者益脾、赤者行血滞、今この説に従ふ、又和にて芍薬の陳旧にして、売れがたきものお水に漬し、赤色に変ぜしめたるお赤芍薬と称して、貨るものあり、偽物なり、又宇陀芍薬信濃芍薬と雲あり、和にて古来上品と雲伝ふれども、是は草芍薬山芍薬(○○○○○○)にして、山の自然生なり、真の芍薬にあらず、葉の形は同して、花に紅白の二種あり、皆単葉にして形ち小く観るにたらず、その実は殻赤色にして黒子ありて、美なること花にまされり、深山に多し、俗にくさぼたんと雲、信州にてやましやくじやうと雲、備後にてのしやくやくと雲、和州宇陀にて此根お栽へ培養したるお、宇陀芍薬と雲、粗皮お去り曝乾したるものなり、外白色切れば内に黒き輪あり、味酸し、又信州にて培養して出すお、信濃芍薬と雲ふ、又丹波伊勢より山生お取、直に乾したるお出す、これお田舎芍薬と雲、最下品なり、