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重修本草綱目啓蒙
八/山草
秦艽 はかりぐさ〈和名抄〉 つかりぐさ〈同上〉 一名産家大器〈輟耕録〉 網草〈村家方〉漢渡あり、根肥大にして黄白色、左ねぢ右ねぢあり、又枝分れてねぢれ、其末合て一本となりてねぢれたるもあり、本根内は空しくして、外のみ網の如くなりて、末はねぢれたるもあり、これお羅紋交糾と雲、享保年中朝鮮の秦艽の苗来る、その後種お伝て今多くあり、葉は毛茛(むまのあしかた)の葉に似て毛なし、一根に叢生す、方茎直立して葉互生し、淡黄花お開く、形烏頭花に似て小し、根黄黒色にして形ねぢれたり、此草は城州の北山、及野州信州甲州に多し、花淡紫色なり、又黄白花もあり、種樹家にて伶人草(○○○)と雲、此根は漢渡の乾したる秦艽根によく似て黒褐色なり、皮お去れば色白く、内空虚にして羅紋交糾す、味苦く薟し、享保年中、漢渡秦艽の中に偶其葉雑り来るあり、その形蘘荷の葉に似て毛茛葉の形に非ず、舶来の蘆頭お見るに、藜蘆葉のものと見ゆ、綱目藜蘆の条下に、韓保昇曰、葉似鬱金秦艽蘘荷と、これに拠て観れば、朝鮮種のものは真の秦艽に非ず、牛扁の集解に、根似秦艽とあれば、牛扁根羅紋交糾なること知るべし、或説に朝鮮種及び伶人草共に牛扁(○○)なりと雲、此説従ふべし、牛扁おげんのせうこにあつる古説は穏ならず、げんのせうこは牻牛児〈救荒本草〉の一種也、