[p.0197][p.0198]
重修本草綱目啓蒙
十一/湿草
兎葵 いへにれ〈和名抄〉集解に説ところ一ならず、大抵三種に別つ、恭の説ところの者は、和名せつぶんさう(○○○○○○)、一名一花草(○○○)、〈筑前〉山足或は原野に生ず、小寒の候、旧根より一茎お抽づること一寸許り、其梢に一葉あり、白頭翁(おきなぐさの)花下の葉に似て至て小く、毛なくして深緑色なり、葉中に一花お包む、立春に至て開く、故に節分草と雲、人家に移し栽るものは、半月後れて開く、形梅花の如く、大さも同じ、その弁尖り、或は鋸歯あり、色白くして中に白蘂多くあり、花謝して葉お生ず、烏頭葉に似て至て小く、岐多くして深緑色大さ一寸余一根に三葉に過ず、夏に至て枯る、花後小扁莢お結ぶこと二三箇、長さ二三分内に二三子あり、鳳仙花子の如く褐色、熟すれば莢自ら裂て子落ち、次年の春生出す、其根形円にして半夏根の如し、禹錫の説ところの者は和産詳ならず、宗奭説ところの者は、即ち救荒本草の野西瓜苗是なり、和名ぎんせんくは(○○○○○○○○)、又播州にてろとうさうと呼ぶ、種樹家にて朝露草と雲、春分子お下し、長じて苗高さ二三尺、枝葉互生す、葉は初出の西瓜葉に似て大さ三寸許、夏月葉間ごとに一花お開く、銭葵花の如くにして、淡黄色にして弁根深紫色、草綿花の小なるに似たり、朝に開き午前に萎む、花後実お結ぶ、木槿花(むくげ)実の如にして小し、内に細子あり、熟すれば苗根共に枯る、時珍説ところの紫背天葵は、和名いちやくさう、是に円葉長葉の二種あり、是は円葉の者なり、城州天台山に生ず、一根数葉地に就て生ず、形ち円にして〓く、大さ銭の如し、紋脈亀甲紋の如し、面は浅緑色にして光あり、背は浅紫色、其茎紫赤色にして長し、夏月中心に高さ三四寸の茎お抽づ、其半已上数花連り垂る、六弁白色、大さ二分許、後円実お結ぶ、南天(なんてんの)燭子より小くして下垂す、生は青く、熟すれば黒し、其長葉の者は苗葉大なり、是鹿蹄草なり、