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重修本草綱目啓蒙
七/山草
淫羊藿 いかりさう(○○○○○) くもきりさう(○○○○○○)〈江戸花家〉 かりがねさう(○○○○○○)〈加州〉 かなびきさう(○○○○○○)〈予州〉 てんどりばな(○○○○○○)〈城州大悲山〉 さんしくやうさう(○○○○○○○○) 一名黄徳祖〈宛委余編〉 橐籥師尊〈輟耕録〉 仙霊皮〈保赤全書〉深山背陰の地に生ず、春分後旧根より茎お抽て出す、長さ尺許、柔軟にして直ならず、上に数花お連ね、皆倒垂す、その花四弁、弁内に細長き蕊弁に傍て四に出す、その端上に曲りて、花の中はふとく高く、鉄猫児(いかり)の形に似たり、大さ八九分淡紫色、又深紫色、藍紫色、淡黄色、白色なる者あり、京師には淡紫色なる者多く、白色なる者少し、勢州紀州江州には白色の者多し、白花の者はちどりさう(○○○○○)〈同名あり〉と呼ぶ、倶に花漸く開くときは其根下より新葉尋て出づ、凡そ一根数葉、その茎細く〓く、光沢ありて粟稈の如し、茎ごとに三枝、枝ごとに三葉、故に三枝九茎草の名あり、その葉初出の時色淡紫お帯ぶ、長ずれば浅緑色、又紫斑なるものあり、その形は長楕にして〓く、端に一尖あり、後に両尖あり、周囲に細刺あり、冬お経て凋まず、紅紫色に変ず、花戸に唐種の淫羊藿と呼ぶものあり、葉和産より長大にして厚し、六葉の端に四出の小花数多く穂おなして直生す、穂に枝ありて菘藍花形に似たり、初は紫色、開く時は色浅し、いかりさうの花形と大に異なり、花は集解に砕小独頭子と雲の文に符し、葉は舶来の者に異ならざる時は、此品真物たるべし、此草江州に自生あり、市中に販く者舶来の葉みな陳久、和産の葉みな新し、いかりさうの花は異なれども、必しも別品ならざる時は、通じ用ゆるも可なるべし、