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倭訓栞
前編三十一/牟
むべ〈◯中略〉 和名抄に郁(いく)子むべと訓ず、延喜式諸国貢進の菓子に近江国郁子と見えたり、今も蒲生郡白部村より霜月に貢せり、麦わらにて小さき殿お作り、其内に赤く熟したるお釣さげたり、むべは御贄おおほむへとよめるの略也、今俗ときはあけび(○○○○○○)といひ、花四には朝鮮あけび(○○○○○)ともいふ、本草にいふ蕑子、斉民要術にいふ藤韶子なりといへり、南部に木まんぢう(○○○○○)といふ、又詩経の薁おむべとよめり、薁と郁と同音なるおもて、郁子と書りといへり、土人此葉お煎じ、癰腫お洗ふ、よく平愈すといふ、