郁子譜并図

郁子譜毎年十一月朔日、近江国高島郡奥之島村王浜より郁子お献ず、延喜式の下〈三十一、〉宮内省、諸国例貢御贄、近江郁子、同〈三十三〉大膳式の下、諸国貢進菓子、近江国郁子二輿籠、〈◯中略〉毎年十一月朔日近江国高島郡王浜より郁子お献ず、文安二年郁子之宣旨、近江国蒲生郡奥之島薁供御人等中、任先例止非分之課役、可専調貢之由被聞食畢、可令下知給之旨、天気所候也、仍言上如件、俊秀誠恐謹言、　　文安二年十一月十一日　　　　　左中弁俊秀　　　　尹大納言殿右宿紙礼紙、有礼紙之上、　　　　尹殿　　　　　左中弁俊秀近江国蒲生郡奥島荘之内、薁供御人等、被停非分之課役、綸旨如此、早存其旨、可専調貢之由、中山大納言殿仰所候也、仍執達如件、　　十一月廿一日　　　　　中務少輔重忠印右一紙口〈の〉表〈に〉　奥島供御人等中　中務少輔重忠元禄年中の請取如左　　折紙片表〈に〉認奥島御郁之事一折　弐合一同　壱合一畳表　拾帖　右請取所如件　元禄十四年〈巳〉霜月朔日　生島左兵衛尉　　奥之島下司殿慶長七年近江国撿地帳　近江国蒲生郡奥之島村五百拾三石六斗七升王浜村高拾三石　近江国絵図に王浜在蒲生郡丸山東〈◯中略〉蕑子(かんし)　むべ一本に如梨実而味酸し、西土にて密砂糖に漬て食す、蔓草之部如藤蔓あり、郁子の字お古来むべに用たるは誤也、郁子は木実而小き物也、にはざくらの類也、郁李仁は薬種に用る也、蕑子、本草綱目三十三附録諸果〈の〉部、時珍曰、賈思〓斉民要術雲、藤生交止合浦、縁樹木正二月花、四五月熟如梨、赤如雞冠、〓如魚鱗、生食味淡、　按、四五月熟事不審、むべお貢するは十一月なり、今木〓木通の二種あり、木通は林間に生じ、木〓より葉小く、紫花お開き、実も異也、大和本草に薜茘雲は木〓なり、広〓地錦抄〈染井農夫編集なれども、家業故形状悉也、〉にも木〓木通の二種お出す、木〓の実お俗にむべと雲、一枝五葉〈四葉も出る〉四時不凋、和名むべかつらと雲、木〓〈和名むべかつらの生葉肥たるは、是より少し大くも出る、〉今花木に木〓花と雲あり、是は大和本草に園史、遵生八揃、花史、酉陽雑俎続編等お引て雲、玉蘭花なり、是と不同、◯按ずるに、薁は、康熙字典〈申集上草〉に唐韻於六切、音郁、蘡薁也とあり、