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採薬使記
上/奥州
照任曰、奥州南部の田奈部と雲ふ所より木饅頭お出す、光生按ずるに、是れ本草に載する木〓の実なり、郁(むべ)子とも、ゆべとも、其実秋熟して味甘し、小児好み食ふ、江州高島郡奥の島権兵衛と雲ふ者、毎年十一月一日、禁中へ献ず、麦藁にて葺たる小き殿お作り、其内に件のむべお釣り下て供ず、文武天皇の比より、今に絶へずと雲ふ、土人此葉お採り、煎じて癰腫お洗ふ、能く崩れずして平癒すと雲ふ、