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重修本草綱目啓蒙
八/山草
延胡索 つぶて(○○○)〈江州〉 げも(○○)〈南部〉 一名滴金卵〈薬譜、輟耕録、〉 元胡索〈品字揃〉 玄壺索〈百一選方〉 玄胡〈万病回春〉 延胡〈同上〉 武胡索〈外科大成〉享保中漢種渡る、大葉小葉の二品あり、大葉お牡丹葉と雲、一葉三枝、枝ごとに三葉、葉の末五に分れ、至て小なれども牡丹葉の状あり、十二月或は初春苗お生ず、大葉は苗高さ五寸許、小葉は短小なり、葉は皆和産より厚し、正二月花お開く、形紫菫花(むらさきけまん)に似たり、初は紫色、後は漸く青色お帯ぶ、花後小扁莢お結び、四月に苗栝る、和産に大葉中葉小葉の三種あり、大葉は濃州にあり、葉は荷包牡丹(けまんさう)の葉に似て小なり、中葉は紀州勢州田野道傍に多し、勢州粥見にて此花お次郎坊と雲、紫花地丁(すもとりぐさ)の花お太郎坊と雲、小児の戯に、両草の花蕚お互に勾引して勝負お決す、花は漢種と同じ、三月に開く、小葉は山の幽谷にあり、葉至て小し、苗高さ僅に二三寸、茎細して糸の如し、花は漢種より微し小し、深山にては四月にも花あり、地冷なる故なり、和産は根大なるもあれども、多は色白く半夏の如し、熊野に産するは微し黄色お帯ぶ、薬四にて售る、漢渡のもの上品なり、根円く或正円ならず、外皮黄褐色、内は色黄なり、唐山にて小き半夏お煮て、色おつけ偽ること、錦囊秘録に見えたり、増、漢渡に鬱金汁お以て零余子(むかご)お煮たる者ありと雲、意お注ぐべし、又近年和州宇陀にて唐種お作り出す、然れども色白し下品なり、