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成形図説
十八/五穀
曾比麻米〈和名抄〉佐々利草、〈蔵玉集、秋ならぬ風にや散むさヽりぐさ花の下枝もなびく五月雨、或ひとの此ものも注したれば、姑く載て後の考に備ふ也、〉畠豇、実取豇、粒豇、霜豇、奴豇(やつこさヽげ)、燕豇〈和名抄引食経、燕豆紫赤色者也、〉燕豆、〈斉民要術、黄高麗豆、黒高麗豆、燕豆、〓豆、大豆類也、〉赤豆、〈閩書〉大赤豆、〈土人亦呼豇豆〉紫豆、大紫豆、〈以上授時通考◯中〉〈略〉曾比豆は、和名抄大豆条烏豆(くろまめ)の次に出せり、曾比とは燕の羽色にや因りぬらん、〈按にいにしへ赭土お曾保といふも紫赤の色なり、又鴗お曾比と雲は別義なるべし、〉畠豇とは、蔓豇に対へし名なり、亦実取とも、粒とも雲は、蔓豇の莢お併食に異なればいへり、此もの早晩二品あり、その状は小豆に似て、其実梢に著て、莢上に向ふこと、独大小豆に異(ちが)へり、故に檠(さヽぐる)の義にていふと見えたり、されど狭々解(さヽとけ)などの意にや、〈佐々利草の名亦おもひ合すべし◯中略〉早豇(わささヽげ)は四月廿日より晦日まで、暗夜に蒔る也、月夜に種おろせば実ならずといへり、薮中沙場ともえらばず皆うヽるなり、草とり肥養にも及ず、七月頃収て、其下(あと)に蕎麦お種るべし、晩豇豆(おそさヽけ)一は霜豇と名く、〈◯中略〉この二種ともに実房の成著より漸々摘採なり、幹は特生にして、苗の高四五寸許、莢に双生と数生とあり、作れる地は去年の粟菔の跡よろし、畠の肥過たるは、其葉にのみ勢至(ゆき)てあしヽ、隻磽壌閑散(あれち)、又は大小麦の中に併植べし、是良田おつひやさずして、培養の艱なく、又飯粥にまじへ、餛飩の餡ともなす、其用またく赤小豆とおなじ、亦済生の良穀なり、奴豇は、但黒白の斑文あるお称(い)へり、