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農業全書
二/五穀
赤小豆赤小豆是又色々あり、赤白緑の三色、〈猶形の大小色づき、所により品々おほし、〉中にも小粒のほそき赤小豆お専種る事なり、小豆は李に生ずとて、すもヽのさかゆる年、小豆よく実るものなり、うへて六十日にして花咲、又六十日にして熟する物なり、種る地の事、大かた麦跡お用ゆべし、是も夏秋二色あり、夏小豆は麦跡は遅し、畑余計あるものは、去年の粟跡お用ゆべし、又秋小豆は夏至の後十日過て、うゆるお上時とし、土用の入お中時とし、同じく半お下時とす、是お過ればおそし、麦跡にてもかきこなし、磽地ならば少灰糞お用ゆべし、種子お凡一段に二升、或二升五合、横筋お切ても、又ちらし蒔にても、薄くむらなく、さかへ茂りて後、枝葉のつき合ざるお好む物なり、中うち芸り二遍ばかりして、葉こと〳〵く落て後ぬき取べし、小豆は三青四黄と雲て、さやの三つはいまだ青く、四つ黄なる時、ぬき取といへども、小豆は霜にあふまで置ても落る事なし、本より末まで粃なくよく実る物れば、勝手にまかせて取収むべし、又椹黒き時、雨の後小豆お種るとも雲なり、又春蒔て夏熟し、さやの黒きばかりお、さヽげおもるごとく、段々もりてとるあり、常の小豆に味はおとれり、是お夏小豆と雲なり、又一種蟹の目小豆とて、其粒細ながく、蟹の目に似たり、是はつる長く、かきや竹などにはヽせ、糞養によりてことの外さかへはびこり、実り多き物なり、味は秋には劣れり、又緑色の物あり、是又味ひよからず、蔓長くそらに栄へ、土地の費すくなく、実り多き事お好む者は、是お作るべし、又白豆(しろあづき)あり、〓豆(ろくづ)のごとくにして子長し、四五月種るのよし、本草に見えたり、〈白豆おさヽげと雲はあやまりなり〉総じて小豆は八新の内の一種にて、出来代りて後は性あしく味もよからず、古きは用ひがたし、