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大和本草
四/穀
豇豆 二種あり、蔓長きは菜とし、蔓短きは穀とし果とす、共に上品なり、蔓長きは籬にまとひのぼる、其莢長こと二尺に余るあり、又短くして一所に房おなして多く実のるあり、蔓長きは春分よりうへ、六月節まで蒔べし、六月にうへたるは、八月中旬にみのり、九月まで有之、最珍とす、苗の初生する時、蠹食ひ絶つ、笋皮及白及(しらん)の葉、或は紙にて本お巻べし、夏秋の菜の上品なり、毎年地おかへてうふべし、つる短きは実黒く、大なる者性味最よし、煮て飯に雑へ、或澆茶飯に加へ食す、性味共に赤小豆にまされり、又塩醤にて煮食す、或沙糖おかけ果として食す、皆佳し、本草に曰、補腎気、毎日空心煮入少塩食之、与諸疾無禁と雲へり、又時珍雲、此豆可菜可果可穀、備用最多、乃豆中之上品といへり、長きは其実下り垂れ、短きは上にさヽぐ、さヽぐるお以てさヽげと名づけたり、又環豇豆あり、其茎の端に莢あり、二莢左右に相対し、両方にまがりて如環、葉も味も常の豇豆に同、是も短紅豆、蔓みじかし、籬にはふ類にあらず、臘月に豇豆お蒸て日に乾かし、多く貯へおき用れば、早く熟し久きに堪ふ、隠元豆、豇豆の類なり、漢名未詳、近年異国より来る、又梶原ささげと雲、皆鄙俗の名づくる所なり、葉は赤小豆に似て蔓生す、莢は大豆より長く、豇豆より短く広し、五月に早くみのる、又栽れば一年に二度みのる、菜として煮食する事、豇豆に同じ、子の色白く、粉おぬるが如し、京都にては眉児豆(なんきん)お隠元豆と雲、与此別也、